2024年度からNISA制度が変更になることをご存じですか?来年度以降は「変更」というより「拡充」という表現の方が実態に近く、「新NISA」として注目を浴びています。
筆者にも新NISAをテーマにしたセミナーの依頼が非常に増えています。今回はそんな新NISAについてのコラムです。
2023年8月現在、NISA制度は「(一般)NISA」、「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」と3種類の制度があります。
NISAを始める場合、「(一般)NISA」と「つみたてNISA」のどちらかを選択する必要があります。両者の併用ができないためです。非課税期間や年間上限額などの違いもありますが、やはり対象商品をベースに考えて選択をすることが多いと思います。
「つみたてNISA」の対象商品は、金融庁指定の投資信託が中心なのに対し、「(一般)NISA」では、個別株式等も対象となります。そのため、多くの投資家がどちらのNISA口座を開設するべきなのか、頭を悩ますことになっていたのです。
「新NISA」では、「(一般)NISA」と「つみたてNISA」が一本化されました。
なお、ジュニアNISAは、両者のどちらかと併用して加入することが出来ますが、両親や祖父母が未成年者のために加入するというやや特殊な形態となります。そのため、2023年末で制度廃止となります。
前述のとおり、新NISAでは現在の「つみたてNISA」と「(一般)NISA」とが一本化されました。
詳しくは別表1で確認いただきたいのですが、現在の「つみたてNISA」を継承する部分として、金融庁指定の投資信託でつみたて投資をする枠(=つみたて投資枠)と、つみたてNISAの対象とならない投資信託や個別株式等で投資家が自由に投資できる「(一般)NISA」の継承部分(=成長投資枠)とがあります。
そのため、新NISAの中で現在の「つみたてNISA」と「(一般)NISA」の双方を実現できるわけですね。
これだけでも便利な制度となったのですが、新NISAはさらに投資家に有利な制度変更点があります。
別表1
具体的には以下の3点です。
1.年間非課税投資枠および保有限度額の拡大
現行のNISA制度から年間の非課税投資枠が拡大します。
現行つみたてNISA:40万円/年 → 新NISA つみたて枠 120万円/年
現行(一般)NISA:120万円/年 → 新NISA 成長投資枠 240万円/年
両者併用できるので、つみたて枠120万円+成長投資枠240万円=360万円と現在と比較して多くの金額を非課税投資に回すことができます。 なお、上限保有額も1,800万円(内成長投資枠は1,200万円まで)保有することができます。現行のNISA制度(つみたてNISA→800万円、(一般)NISA→600万円)と比較して、トータルで利用できる上限額も大幅に拡大しています。
2.非課税保有期間の無期限化
量だけでなく、非課税期間も拡充しました。
現行では
つみたてNISA → 20年間
(一般)NISA → 5年間
ですが、新NISAでは保有期間が無期限化されます。
いつまで保有しても非課税なので、期間を気にせず長期保有することが出来ます。
3.枠の再利用
新NISAでは保有限度額MAX(=1,800万円)まで金融商品を購入したとしても、
その後評価益が出たので売却すると、その分の枠があきます。
現行のNISAの場合、枠の再利用という観点はありませんので、評価益が出ても
売却のタイミングには頭を悩ませがちです。
そのため、この枠の再利用は個人的にはとてもいい制度だと思います。
このように、新NISAはとてもお得な制度だということがわかりますね。
さて、現行NISA口座を開設されている方からよくご質問をいただくのが、すでに現行のNISAで購入した金融商品の取り扱いです。
新NISAを始めるにあたって、現行のNISA制度で購入した分を売却する必要はありません。現行のNISA制度で購入した分はそのまま現行のNISA制度として活用することができます。
また、すでにNISA口座を開設している方は、新NISAを始めるにあたって別途口座開設をする必要もありません。
現行のNISA制度を開設している金融機関にて、自動で新NISAの口座が開設されます。そのため、まだ現行のNISA制度で口座開設をしていない方は、新NISAの誕生を待たずに現行のNISA制度から始めてみてはいかがですか?
東京都出身。 立教大学社会学部卒業後、東証一部上場のIT企業に勤める傍ら2006年FP資格を取得。 「資産形成」「退職金運用相談」を専門とし、日本全国で年間100件を超えるセミナーを開催。その他相談業務やコラムの執筆等幅広く活動。趣味は、海外(貧乏)一人旅。海外40を超える国と地域を訪問。現地のお酒を飲みながらサッカーを見るのが至福の時。旅行中にも現地の銀行金利や不動産価格を欠かさずチェック。